自然な遊びの中で学ぶ — NETとは?

ABA療育のやり方はひとつじゃない

ABA(応用行動分析)を使った療育には、さまざまなアプローチがあります。その中でよく知られているのが、DTT(Discrete Trial Training)です。1980年代にロバース博士の研究でその効果が証明されて以来、広く使われてきました。

DTTでは、スキルを細かいステップに分けて、ひとつひとつ繰り返し練習します。机に向かって課題に取り組み、正しい反応にごほうびを渡すというスタイルが一般的です。練習の機会をたくさん作れる反面、お子さんが課題に抵抗を感じやすかったり、教室で覚えたスキルを日常生活でうまく使えないケースがある、という難しさもあります。

そこで今回ご紹介するのが、NET(Natural Environment Teaching)」です。


NETってどんな方法?

NETは、お子さんが興味を持っているものや活動を使って、遊びの中でスキルを教えていく方法です。

DTTと同じようにスキルをスモールステップに分けて教えますが、大きく違うのは「ごほうび」の与え方です。DTTではおもちゃや食べ物がごほうびになることが多いのに対して、NETではやりとりの中で自然に生まれる結果をごほうびにします。たとえば、お子さんが「ボール」と言ったら、そのボールを渡す — というように、言葉と結果が自然につながります。

NETに近い考え方として、PRT(Pivotal Response Treatment )、Incidental Teaching、Mand-Model Procedureなどの方法もあり、これらをまとめてNTAs(Naturalistic Teaching Approaches)と呼びます。

当教室では、お子さんの発達段階に合わせてDTTNETを組み合わせながら支援を行っています。


NETの3つの特徴

① お子さんの「やりたい!」を大切にする

NETの出発点は、お子さんの「動機(やりたいという気持ち)」です。

たとえば、お子さんが手に取ったおもちゃをきっかけに、色や形の理解、物の交換、見立て遊びといったスキルを教えていきます。好きなものと一緒に新しい課題を提示したり、遊びの見本を見せたりしながら、お子さんが「やってみたい」と感じる瞬間を引き出していきます。

② 「実際の生活で使えるスキル」を育てる

机の上でりんごのカードを選べても、おままごとで「りんごちょうだい」と言われた時に渡せなければ、そのスキルはまだ「使えるスキル」とは言えません。

NETでは、できるだけ実際の生活に近い環境でスキルを練習します。遊びや日常の活動の中で自然に使えるスキルを育てることを大切にしています。

③ 「般化」— いつでもどこでも使えるように

習得したスキルを、異なる場所・もの・人との場面でも使えるようになることを「般化(はんか)」と言います。

たとえば、教室で「にんじん」を覚えたお子さんが、スーパーで「にんじんとって」と言われても選べなければ、まだ般化できていない状態です。NETは自然な環境の中で学ぶため、さまざまな場面・状況を練習の機会に組み込みやすいという大きな強みがあります。


NETを使う上で大切なこと

「動機のサイン」を見逃さない

欲しいおもちゃに手を伸ばす、自分から遊び始める — こうした分かりやすいサインだけでなく、お友達のおもちゃにちらっと目を向ける、ほんの少し力が抜けるといった小さな変化にも動機のサインが隠れています。セラピストはこうしたサインを敏感に察知し、教えるタイミングを逃さないよう心がけています。

その子だけの「強化子」を見つける

何がそのお子さんにとっての「強化子(やる気につながるもの)」になるかは、ひとりひとり違います。遊びの中でそれを見極めることが、NETを効果的に進める鍵のひとつです。

「やってみたい」と思える環境づくり

興味の幅が狭いお子さんや、新しいことへの抵抗が強いお子さんの場合、まずセラピストが積極的に「やってみたい」と思えるきっかけを作ることが重要です。どのタイミングでどう提示するか、お子さんにとって少しの努力でできそうな課題かどうか — こうしたことを常に観察・分析しながらセッションを進めています。


NETを取り入れると、どんな変化が見られる?

NETのアプローチを続けていく中で、お子さんにはこんな変化が見られてきます。

  • 自分から課題に取り組もうとする
  • 「もう一回!」という要求や、好きなことが増える
  • 新しいものや活動への興味が広がる
  • 周りの人の言葉や動きに目を向けるようになる
  • 人とのやりとりが増える

おわりに

NETは「ただ遊んでいるだけ」に見えるかもしれません。でも実際には、セラピストがお子さんの動機・サイン・反応を瞬時に読み取りながら、ひとつひとつの瞬間を学習の機会に変えています。

遊びの中にこそ、お子さんの力を引き出すヒントがたくさんあります。
ひまわりABA教室では、保護者の方との連携を大切にしています。日々の療育の中で気になること、おうちでの困りごとも、スタッフと一緒に考えていきます。