1対1か、みんなと一緒か — 集団・個別療育のそれぞれの役割
「どちらが良い?」より「どちらも必要」
保護者の方からよく聞かれる質問のひとつが、「集団と個別、どっちが合っているんでしょう?」というものです。
結論からお伝えすると、理想は両方です。
アメリカの早期集中介入では、まず1対1の個別療育からスタートし、学習が進むにつれて少しずつ集団の要素を取り入れ、最終的には学校という集団教育へつなげていくというアプローチが標準的です。「ABAといえば個別」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、どちらか一方が正解なのではなく、それぞれに大切な役割があるのです。
それでも「どちらか1つ」を選ぶとしたら
少し意地悪な質問をしてみます。もしどちらか1つしか選べないとしたら?
私は「集団」と答えます。ただしここでいう集団とは、2人以上の小集団も含みます。
理由は明確です。友達との関わりの中でしか育てられないスキルがあるからです。
友達と一緒に盛り上がる体験、友達への興味、順番を待つこと、「貸して」「いいよ」といった交渉のやりとり——これらは、大人との個別療育では代替できません。ASDの診断基準のひとつが社会的コミュニケーションの困難であることを考えると、子ども同士のやりとりを通じた学習の場は、療育においてとても重要な意味を持ちます。
では個別に意味はないの?——もちろんあります
集団の方が価値が高い、ということではありません。
特に人数が増えると、一人ひとりの学習状況を細かく把握することが難しくなります。6〜7人を超える規模になると、それぞれの目標の達成度を丁寧に評価することも、個々の特性に合わせて教え方を変えることも、現実的には容易ではありません。
特に幼い時期は、「学ぶって楽しい」という感覚を育てることがとても大切です。そのためには、その子のペースや特性に合わせた個別的な関わりが欠かせません。
理想的な流れとしては、まず個別(または少人数)の環境でひとりひとりのニーズに合わせた学習を積み重ねながら、友達への興味も少しずつ育て、やがて小集団・集団へとつなげていく——というステップです。
「就学準備」って、スキルを教えることだけじゃない
「就学前にできる限りのスキルを身につけさせてあげたい」という保護者の気持ちはとてもよくわかります。言葉を増やすこと、理解力を高めること——どれも大切です。
ただ、長い目で見たとき、小学校以降の学びの量に一番影響するのは、実はスキルそのものよりも**「友達といると楽しい」という感覚**かもしれません。
専門的には「強化子の変容」と呼びますが、友達と一緒にいること自体が「うれしい」と感じられるようになることが、その後の学習意欲に大きくつながります。小学校生活は長いものです。「みんなと楽しく学べる子ども」を育てることを、私たちはとても大切に考えています。
言語・認知スキルの向上と同じくらい、こんなことも時間をかけて育てたいと思っています。
- 人がやっていることに興味を持てる
- 先生の言葉が分からなくても、友達を見て何とかしようとする(模倣のスキル)
- 分からないとき、困ったとき、「わからない」という表情ができる(気持ちの表現)
わが子は個別から?集団から?
「理屈はわかったけれど、うちの子はどっちから始めたらいい?」という疑問もありますよね。
以下のような場合は、個別、または大人1人に子ども2人程度の小集団からスタートするのがよいでしょう。
集団への緊張が強い場合 たとえば場面緘黙のあるお子さんで、1対1では話せるけれど集団では話せない——そんなケースでは、まず担当の先生との関係をゆっくり築いてから、その先生と一緒に集団の場に少しずつ近づいていく方法をとることがあります。
集団への抵抗が強い場合 集団の部屋に入ることを大変嫌がるお子さんには、まず先生と1対1で慣れてから、少しずつ集団との距離を縮めていくやり方をとることもあります。
個別の丁寧な練習が必要な場合 集団への抵抗はなくても、人数が増えると学習の伸びが遅くなるお子さんには、個別の時間をしっかり確保することで、着実なスキルの定着を優先させることが大切です。
また、言語聴覚療法の構音訓練のように、セラピストがお子さんの発音をしっかりと聞き取れる環境でなければ成立しない療育もあります。そういった専門的な訓練は、個別でなければ意味がありません。
大切なのは「やってみて、見直すこと」
最終的には、実際に始めてみてそのお子さんの反応と学習の伸びを確認することが一番の答えになります。専門家と一緒に「どのスタイルが合っているか」を考えながら始め、合っていないと感じたら柔軟に変えていく姿勢が大切です。
ひまわりABA教室では、保護者の方との連携を大切にしています。日々の療育の中で気になること、おうちでの困りごとも、スタッフと一緒に考えていきます。


