自閉スペクトラム症(ASD)とは?

はじめに

「自閉症」と聞いて、映画『レインマン』のような、独特の才能を持つ人物を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。もちろん、突出した能力を持つ方もいらっしゃいますが、実際にはASDのお子さんの姿はひとりひとり大きく異なります。

長年にわたりASDのお子さんたちと関わってきた私が感じるのは、「本当にそれぞれ」という言葉に尽きます。つま先立ちで歩き、顔の前で手をひらひらさせるお子さん。スーパーの駐車場でいつもと違う場所に停めようとすると涙が止まらなくなるお子さん。視線が合いにくく、相手の表情から気持ちを読み取ることが難しいお子さん。知的な能力が非常に高い方もいれば、言葉をほとんど話さない方もいます。

このコラムでは、ASDについての基本的な知識を保護者の皆さまと共有したいと思います。


ASDの診断基準

現在、ASDの診断にはDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)が使われています。診断の核となるポイントは以下の2つです。

① 社会的コミュニケーションの困難 他者との情緒的なやり取りがうまくいかない、気持ちを察することが難しいなど

② 限定された行動・興味・活動のパターン 反復的な動作、強いこだわり、決まったやり方への執着など

これらの特性が3歳までに現れ、現在も日常生活に支障をきたしている場合に診断されます。ひとことで言えば「やり取りが難しく、同じことを繰り返しやすい」ということです。

なお、診断ができるのは医師のみです。診断の際には、言語能力のテストやADOS、M-CHATといった行動観察に基づく検査が組み合わせて使われることが多いです。


「スペクトラム」という考え方

虹の色を思い浮かべてください。赤からはじまり、橙・黄・緑・青・紫へと、境界線なく連続してつながっていますよね。「スペクトラム」とはそのような連続性を意味します。

以前のDSM-4では、「自閉症」「アスペルガー症候群」「PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)」という形で別々の診断名が使われていました。しかし現在は、これらは本質的に同じ障害の"グラデーション"であるという考え方に変わり、「自閉スペクトラム症(ASD)」としてまとめて捉えるようになっています。

また、「高機能自閉症」という言葉を耳にすることもあるかと思いますが、これは一般的に知的な遅れのない方を指す表現であり、正式な診断名ではありません。


原因について

ASDの原因は、現時点では完全には解明されていません。遺伝的要因や環境要因など、さまざまな角度から研究が進められていますが、まだはっきりした結論は出ていない状況です。症状の多様さからも、単一の原因ではなく複数の要因が絡み合っていると考えられています。

ひとつだけ明確にお伝えしたいのは、「お母さんの育て方や接し方が原因」という考え方は、現在では完全に否定されています。ASDは先天的な特性であり、親御さんのせいでは決してありません。どうか、そのような誤った情報に心を痛めないでください。


「一生の障がい」=「不幸」ではありません

ASDは生涯にわたる特性ですが、それは「質の高い人生が送れない」ということを意味しません。

先輩お母さんである、作家のエミリー・パール・キングスレーが、「ようこそオランダへ(1987年)」の中で、こう語っています。

「イタリアに行くつもりで飛行機に乗ったら、オランダに連れて行かれてしまった。ちょっと違う場所に連れて行かれてしまっただけ。イタリアのような華やかさはないかもしれない。でも、チューリップがあり、風車がある。イタリアに行くはずだったのに、という思いは決して消えることはありません。でも、イタリアに行けなかったことをいつまでも嘆いていたら、オランダならではの素晴らしさ、愛おしいものを楽しむことはないでしょう。」

実はASDではなくダウン症のお子さんについてなのですが、まさに同じことが言えると思い、私にはとても響きます。

前文の日本語訳・英訳は、公益財団法人日本ダウン症協会ウェブサイトのこちらのリンクで読むことができますので、ご覧ください。
https://jdss.or.jp/plus-happy/wp-content/uploads/pdf/jp/book/JDS2019-tane_page28_29_protected.pdf


ABAでできること

ASD自体をなくすことはできませんが、お子さんの「できること」を増やし、生活をより豊かにすることは可能です。それがABA(応用行動分析)を用いた療育の目指すところです。

コミュニケーションのスキル、社会性、生活習慣 — ひとりひとりの特性と強みに合わせたプログラムで、お子さんと保護者の皆さまを一緒にサポートしてまいります。

ひまわりABA教室では、保護者の方との連携を大切にしています。日々の療育の中で気になること、おうちでの困りごとも、スタッフと一緒に考えていきます。