子どもが「欲しい!」と思った瞬間が、最大の学びのチャンス
「いつ教えるか」が、実は一番大切
言葉やスキルを教えるとき、「何を教えるか」と同じくらい重要なのが「いつ教えるか」です。
シンプルに言えば、子どもが学びたいと思っている瞬間です。
「机に座って勉強したい!」と自分から言ってくる子どもは、なかなかいません。だからこそ、ゲームに学習を組み込んだり、ごほうびを活用してモチベーションを引き出したりする工夫が必要になります。ABAの個別療育では、机上の課題を始める前に「今日は何のごほうびにする?」と子ども自身に選ばせることから始めるのも、そのためです。
勉強は机でするだけじゃない
ただ、学びの場は机の前だけではありません。日常生活の中にこそ、自然な学習の機会がたくさんあります。
たとえば——
- 外に出かけたくてうずうずしているとき → 「開けて」と言う練習、靴を持ってくる練習
- お腹が空いてお菓子の棚に手を伸ばしているとき → 手を洗う習慣、数を数える練習
- 電気ケトルや熱い飲み物に興味を示したとき → 「熱い、触らない」というルールを教える場面
こうした自然な流れの中での学びは、机上の練習よりも効果的なことが多いのです。お子さんがすでに「やりたい!」「欲しい!」という気持ちになっているので、動機が最初から高い状態にあるからです。
ところが残念ながら、こういった絶好の機会を見逃してしまっているご家庭が多いのも事実です。
「泣く前に与える」が、学びを奪っている
保護者の方への支援の中で、よくこんなお話をします。「子どもからアプローチさせてみてください」と。
言葉が遅いお子さんや、発達に特性のあるお子さんは、欲しいものを伝えられずに泣いてしまうことがあります。そのとき、どうしていますか?
泣く前に察して与えてしまっていませんか?
お気持ちはよくわかります。泣かせたくない、困らせたくない——その思いは自然なことです。でもABAの視点から見ると、子どもが「欲しい」と感じている瞬間こそ、モチベーションが最も高まっている学習のチャンスなのです。
少しだけ待ってみてください。泣かなくても工夫すれば欲しいものが手に入ると気づいたとき、それが本当の意味での学びになります。
日常の中で実践する——3つのステップ
「わかってはいるけど、毎日忙しくて……」という声もよく聞きます。そんな方のために、日常の中で自然に実践できる3つのステップをご紹介します。
① ターゲットを決める
まず「何を教えたいか」を明確にします。
たとえば「泣く代わりに『欲しい』と言う」「視線を合わせて指さしする」「お母さんと呼ぶ」——何でも構いません。教える側がゴールをはっきり持っていないと、せっかくのチャンスが来ても活かせません。
② 子どもの動機が高まるのを待つ
「この子はこれが好きだから」という親目線の予測で先に動いてしまうと、タイミングを逃します。
大切なのは、子どもが「欲しい」という意思を自分で示す瞬間まで待つことです。手を伸ばす、掴もうとする、じっと見つめる——そういった行動が出たとき、動機がピークに達したサインです。人のやる気はその時々で変わります。しっかり観察して、その瞬間を見極めましょう。
③ プロンプトする(さりげなく手助けする)
動機が確認できたら、すぐに適切な行動の手助けをします。たとえば子どもが手を伸ばした瞬間に、「取って、って言ってみよう」と見本を見せる——これが「プロンプト」です。
このとき大切なのはスピードです。モチベーションが高い状態は長くは続かないので、タイミングよく動くことが効果を左右します。
教える機会は、一日に何百回もある
お子さんの「欲しい」「やりたい」を追いかけるだけで、一日に何百回もの学習機会が生まれます。そして教える内容も、少しずつ難しくしていけます。
「取って」から始まり、「赤いコップ取って」「そっちじゃなくてこっちにおいてよ」——言葉のレベルは無限に広げられます。「欲しいなら、先におもちゃ片付けようね」と、別の課題を組み合わせることもできます。
特別な道具も、特別な時間も必要ありません。日常の中にすでに、豊かな学びの場があります。
ひまわりABA教室では、保護者の方との連携を大切にしています。日々の療育の中で気になること、おうちでの困りごとも、スタッフと一緒に考えていきます。

